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    • 2019.05.01 Wednesday
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    かげろう日記(著・吉村達也)

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      JUGEMテーマ:ホラー小説・怪談など

      時の流れには「過去・現在・未来」の三種類があると信じられているが、じつは人生には「現在のみ」しかない、という真実を。

      それを食い止めるために、人は日記を書こうとする。過去を変色させまいと。


      ノート


      角川ホラー文庫で、圧倒的な分量と存在感を放ち続ける吉村達也先生の中篇です。
      読んだキッカケは、『うぉおあああああ小説読みたいぃいいい』となってうろうろ物色し、たまたま目に入ったからです。
      しかしびっくりするほど読みやすかった。それでいてめっちゃくちゃ怖かった。
      閉め切った部屋で読んだんですが、とある場面では、

      わたしのうしろにも、だれかいて、ふとしたときに、みみもとで、はなしかけてきて……

      という妄想にかられました。怖かったです。

      あらすじ。
      会社員・町田輝樹の元に送られてきた、『かげろう日記』。
      それは輝樹が捨てた恋人、内藤茜の日記だった。
      強盗に殺されて、とうに死んだ彼女は輝樹への未練を綿々と書き綴っていた。

      日記形式は本当に怖い!!
      綾辻行人先生著の、『四〇九号室の患者』も思いましたが、日記形式の文章は何といいますか、生々しさが段違いです。
      他人の日記を盗み見ている下世話だけど愉しい心地、いとも容易く感覚移入(※感情ではない)してしまいます。
      このかげろう日記も、最初はきちんとした手記のような文章だったんですが、段々と手の動くままに綴っている雑な文面になっていくので、うわぁ……とドン引きしながら見入り、じゃなくて読み入りました。
      特に70頁〜71頁の見開き、76頁は本気で冷や汗が流れました。


      メインの謎は、『誰がかげろう日記を輝樹に送ったか?』です。
      正直に言うと、真相が明かされていく過程で、『またこのパターンかよーホラーじゃなくてサスペンスのパターンかよー( ´ᆺ`)』とか思っちゃったんですが。
      しかしさすが吉村達也先生、ひとひねり入れてました。早合点してすみません。

      この物語の最大の被害者は犯人だと思いかけましたが、やっぱり、姉に頼まれたとはいえ強盗をする人間なので、自業自得だと思い直しました。
      というかこの主人公も自業自得でした。悲惨すぎではありますが。
      そして内藤茜さん、ラストは単なる悪霊じゃないですかヤダー。

      『陽炎』でしかない過去に囚われたまま、現在を亡くし、未来を完全に失った人たちの物語でした。
      探偵ポジション(?)の宮本卓郎氏の、『恋はホラー』という言葉がピリリと効きます。
      だけどそんな感想を持っても、この、復讐を果たした内藤茜という女性は、


      でも、それでいいのだ。


      と返すのでしょう。
      失った恋と、『日記を書く』ことに執着した彼女だから。

      ハサミ男(著・殊能将之)

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        JUGEMテーマ:ミステリ


         何もない。
         わたしの内側は、からっぽだ。
         そして、わたしの内側も、からっぽだった。
         ふたつの異なるからっぽがある。その境目がわたしだった。


        「おまえに求められてるのは、俺と同じ直感を身につけることじゃない。おまえ自身の物の見方を貫くことだよ」
         
         


        ずっと読みたかった!!
        ので読みました。(分かりやすい)

        あらすじ。
        美少女を殺害し、研ぎ上げたハサミを首に突き立てる猟奇殺人。
        マスコミがつけた通称は、『ハサミ男』。
        『ハサミ男』は、アルバイトで生計を立て、週末は自殺に勤しみ、それが失敗するたびに『医師』に嫌味を言われ、おいしいものの誘惑に負けながら、第三の犠牲者を調べ上げていた。
        だがターゲットの少女は、『ハサミ男』の手口そのままの他殺死体で『ハサミ男』によって発見される。
        捜査に乗り出した目黒西署の磯部刑事は、心理分析官・堀之内に指名され、独自で捜査を始める。


        メインの仕掛けは割りとすぐに分かりました。(文章の端々にある柔らかさで)
        ですがそれでも面白い。犯人は最後まで結局わかりませんでしたし。
        新たな発見や納得、「あーそうかそうか!」と腑にぽたぽた落ちます。
        非常に多角的な物語というか、ハサミ男、警察と視点が変わることで、『事実の見方』がころころ変わるといいますか。
        一番納得いったのは、作中に出てくるミートパイのおいしい喫茶店のマスターが、やたらハサミ男に懐く(語弊もち)のですが、それもハサミ男が美人な女性だから、という点。ミートパイのトマトソースを誉められたからと見せかけて。
        ハサミ男(視点の文章)によって、この描写はこれこれこういうことだ、と説明されて無意識で納得しましたが、事実がわかって読み直すと別のものが見えてくる。というのが沢山ありました。
        これが伏線の張り方なのか……とものすごく勉強になりました。

        この認識の錯誤(うまい言葉が見つからない……)は、作中でも起こっていて、真犯人が『ハサミ男』という名称に引きずられて、見誤っていたと言っていましたが、私(読者)も同様です。
        心理分析官』という名前の職のイメージに引きずられて、磯部刑事に割り振られた仕事の内容に、まったく違和感を持ちませんでした。そーだよなーこんなんあるわけないよな小説ドラマ漫画じゃあるまいし! この二次元脳!(to自分)

        こうやって自分の先入観を自覚した後ですと、先輩刑事たちの『自分の考えを確立させる』、という言葉が活きてくるような気がします。
        そして磯部刑事らが、真犯人に辿り着いた過程もすごかった。
        日高が怪しいという情報操作があったからこその結末だったと思います。
        真犯人にも知らないことがありましたし、全部を知れるのは全部を読める読者だけという構成が最高に痺れます。


        そしてキャラクターが面白かったです。
        ハサミ男は割と鈍感です。
        日課は美少女のストーカーと食べることと自殺企図の美人って斬新すぎる。
        そして割と大ピンチなのに、そこはかとなく余裕があるというか、
        これが彼女に惚れている磯部刑事の視点だと、また違って見えていて、アンジャッシュのコントばりのすれ違いが起こってて笑いました。

        しかしちょこちょこ謎も残りました。
        被害者の樽宮由紀子の真実、実は『ハサミ男』の方が作られた人格だったのか、医師の原型は父親だったのか。
        ……など。

        あと、シリーズものになったら相当面白いだろうなぁと思いました。
        磯部刑事が捜査中の事件を、『医師』の口車に乗せられてべらべらしゃべり、『ハサミ男』が渋々調査を始めて、何やかんやで犯人に辿り着き、『医師』がおいしいところ取り……とか。
        (その場合『ハサミ男』としての犯行はおやすみで)

         

        "文学少女" と神に臨む作家(著・野村美月)

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          JUGEMテーマ:ライトノベル

          「読者は、作家を裏切るのよ」


          けれど、心葉くん。
          わたしは、物語を糧として生きる文学少女で、天野文陽の娘なのです。
          作家の成長を妨げるようなことは、できません。


          そうして、神に臨む作家になろう。



          前巻の、『“文学少女”と月花を孕く水妖』からどれだけ経ったでしょう。
          文学少女シリーズの最終巻、感想です。
           
          あらすじ。
          "文学少女"の天野遠子と出逢ってから二年。受験と卒業の時期が近づいてきた。
          文芸部の部室での、三題噺のおやつと"文学少女" の蘊蓄の日々も終わる。
          ななせと付き合う心葉の前に、井上ミウの担当だった佐々木が現れる。しかし心葉は、「二度と小説は書かない」と告げる。
          その夜に家に訪れた遠子は、心葉に何故と問い質し、小説を書くように言うーーこれまで幾度となく心葉を救ってきてくれた"文学少女" の、裏切りの言葉。
          その波紋は広がり、流人を暴走させ、天野遠子の秘密が明らかになっていく。


          これまでのーー『死にたがりの道化』から始まったすべてのお話が、この最終巻に繋がっています。
          この構成が本当に見事でした。どれかひとつでも欠けていたら、この結末には辿り着きませんでした。
          下巻の336頁のくだりは、圧巻です。

          モティーフはジットの『狭き門』です。複雑で不可解な愛の物語です。
          遠子先輩は『狭き門』をコンソメスープに喩えていましたが、私は、この "文学少女" こそコンソメスープのようだと思いました。
          様々な材料を煮込み、大量に出るアクを除き、丁寧に漉し、すべてが混ざり合って最後は透明な琥珀色になるスープ。
          調理の過程で、鍋の中はドロドロになります。けれど手間と時間、愛情をもって手を加えることで、『完成された』という意味を持つ名に相応しいものが出来上がります。

          この物語も同じです。
          過程がこれでもか! ってくらいにドロドロしてます(笑)
          愛情、憎しみ、嫉妬、執着……大人も子供も本当にダメダメで、非常に歪んでいます。
          (歪んでないのは本当にななせちゃんくらいでした)
          強いけど、弱い人たちでした。人と人が接することでどうしても避けられない悲劇でもつれ合い、複雑に絡み合っています。

          読者は作家を裏切る。
          悲しくてもこれは真実です。
          作家も読者を裏切る。
          痛ましいけど、どうすることもできません。

          けれど、それでも物語は、希望の光を灯します。

          きっと作者の野村先生が伝えたいであろう言葉がきちんと伝わり、みんながみんなハッピーエンドではないけれど、苦くて苦しい物語に違いは無いけれど、読後は透明で味わい深かったです。本当にコンソメスープみたいでした。

          遠子先輩は、これまでずっと強くて優しい人でした。
          そんな人が初めて見せた弱さや身勝手さ。そして当事者だからこそ、彼女でも読み解くことができない真実に直面します。
          それを助けるのが心葉くんでした。今までの遠子先輩の手腕をなぞるように、真実を探り当て、別の側面から読み解き、悲劇に凍り固まった一人の『作家』に、十七歳の自分が見つけた真実を示し、光を示します。
          強い人が強いままでないように、
          弱い人が弱いままではないーーそれは心葉くんも、『道化』に出てきたとある二人も同じでした。

          唯一にして最大の残念な点は、琴吹ななせちゃん。
          誰よりもがんばっていた彼女は、何ひとつ報われませんでした。
          けれど彼女のこれからを信じます。信じられます。ななせちゃんの物語の続きで、彼女は幸せになるのだと。必ず、絶対、誰よりも、世界でいちばん幸せに。
          そうじゃなきゃ……おかしいです!! 本当におかしいです!!(・_・)マガオ

          めっちゃくちゃに暴走していた流人くん。うざいくらいにぶっ壊れてて暗躍していました。
          でも麻貴先輩と竹田さんにしてやられたので、だいぶ溜飲が下がりました。( ・ω・)<ザマァ。
          彼の望みも叶えられました。だけどやり過ぎです本当に非道いです。琴吹さんに土下座しろよコノヤロウ。


          本編はこれで終了とのことですが、番外編がまだまだあるので、ゆっくり読んでいきたいと思います。

          遠子先輩にはいろんなものをもらったなぁと思い返します。
          彼女のおせっかいな言葉は、遠子先輩自身に言い聞かせてきたからこそ、こんなにも響いたのか、と……今では思います。


          読んでよかった。
          心からそう思える、そんな物語でした。

          怪しい店(著・有栖川有栖)

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            評価:
            有栖川 有栖
            KADOKAWA/角川書店
            ¥ 1,728
            (2014-10-31)

            JUGEMテーマ:ミステリ

            「ええ品みたいやから、五千円で買わせていただきます」
             魚津は頭を下げた。
            「おおきに。ほな、売らせていただきます」

            「商売の本質は、単なる経済活動ではなく幸福の創出だ」

             神の指、再び。



            店


            火村シリーズ、最新作です。
            そういえば自分、高原のフーダニットと菩提樹荘の殺人を読んでないような。( ・ω・)<アチャ-

            『店』にまつわるミステリな短篇集です。
            目次は、古物の魔/燈火堂の奇禍/ショーウィンドウを砕く/潮騒理髪店/怪しい店
            ……です!

             
            【古物の魔】
            骨董品店の店主が殺された。第一発見者は彼の跡継ぎ候補とされる甥。
            店主は生前、怪しい行動を取り、謎の言葉を残していた。

            論理というよりは辻褄合わせ。犯人のためではなく、凶器のためのアリバイ工作。
            犯人をよく知る人物の言葉が、本当にその通りだと思いました。そうしたら少なくとも人は死ななかった。


            【燈火堂の奇禍】
            自身の愛蔵書で古書店を開き、『この本を買いたければ十日後に再訪しろ』と言う偏屈な店主。
            彼が万引き犯に突き飛ばされたとき、本当は何が起こっていたのか。

            この古本屋めんどくさ!! ーーというのが正直な感想です(笑)
            火村先生の商売論(?)が聞ける貴重な機会。『売る方も買う方も幸せになる』、なかなか素敵な言葉です。
            めでたしめでたしと〆ていましたが『そーかぁ?』と頭を捻ります。この店主の妙ちくりんなこだわりがなければ少なくとも以下略。
            『乱鴉の島』の懐かしい人の名前が出てきたり、火村先生とアリスが篠宮のおばあちゃんの誕生日を祝ったり、猫と戯れたり。
            ほっこりする場面もあります。


            【ショーウィンドウを砕く】
            破綻寸前の芸能事務所の社長は、愛人を殺すことを決意した。
            完全犯罪に挑もうとした。

            犯人視点です。犯人の目から見ると、火村先生はこんなんなのか……とちょっと愕然とします。
            (だけど犯人の目から見ても火村先生とアリスは仲良しなようです。( ・ω・)<イイネ!)
            へー高級店ではおつりは全部ピン札なんだーと庶民丸出しの感想が浮かびました。
            「あなたが欲しいものは何ですか?」という問いに、「何もいらない」以上に非人間的な答えは何だろう。
            「『欲しいもの』って何ですか?」でしょうか。


            【潮騒理髪店】
            気分転換に理髪店に行こうか、と思ったアリスの元に、火村からの電話が。
            そして彼は、旅先で入った理髪店のことを話し出す。

            長電話ミステリ。ひとつ前の物語で殺伐と沈んだ心が浮上します。なかよし!
            電話越しに時間的余裕があるなと察したら、スランプなうと愚痴って甘える。
            そして「がんばるしかないだろ」と返される。なかよし!
            謎そのものより、理髪店が如何に素晴らしいサービスをしたかに心惹かれました。ああ羨ましい私も行きたい。


            【怪しい店】
            客の悩みを聞くだけの店の主が殺された。
            彼女の裏の顔は、脅迫者だった。

            とりあえず自分の悩みなんて知らん人に話すもんじゃないね。
            するんなら匿名で、ってな気持ちです。お客さんの信頼を裏切るとか商売人として言語道断です。
            犯人の名前が最後の頁まで明かされないので、スピード解決した感がすごいです。
            アリスが大活躍しましたが、最後は新キャラ(?)の高柳刑事と反省会してます。
            火村先生の<闇>の部分にもちょこっと触れて、そしてアリスが火村先生の傍にいることの重要さにも触れられ。
            これからもお互いの近い場所にいてね、という気持ちです。


            お気に入りは、【古物の魔】と【潮騒理髪店】です。
            【古物の魔】は、物との関わり方を考えさせてくれます。
            特に拾った茶碗を完全に修復する手間を考えたら、その金額の価値があるーーというところ。
            物語のあちこちに、ノーパソやネット販売やFaceBookなど、現代的(言い過ぎかも)な単語が散らばっていて、ああ火村シリーズも近代化なうだなぁ……と思ったんですが、メインテーマは『古いもの』。その対比がすごく綺麗でした。

            【潮騒理髪店】は、とにかく店主の油(あぶら)さんが渋かっこ可愛くて♡キラキラ
            おやつを頂いておりましたmgmg、からの、神の指での心を尽くしたサービス。純粋に火村せんせー羨ましい。
            そして、作中に『良くないこと』を企んでいた人がいたんですが……。
            その人が思い直したのが、とても良かったと思います。
            それは店主さんのおかげなんですけど、彼は何も特別なことはしていません。
            自分の仕事を当たり前にちゃんとしている人と関わって、勝手に考えが変わるーー尊ぶ言葉を使うなら、『救われる』ーーのは、とても素敵だと思います。

            やっぱり有栖川作品は、優しいです。

            夜よ鼠たちのために(著・連城三紀彦)

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              JUGEMテーマ:ミステリ

               
              たぶん、キャンバスに色を塗ることばかりに夢中になって、自分自身に人生の色を塗るのを忘れてしまったのだろう。

              二十年経って、今もあの誘拐犯の耳は、僕の心臓に触れているのです。


              手紙

              信子が再び俺の手に戻ってきたのだ。彼女は俺が生涯で二度目に、俺の声を、俺の言葉を語った相手だった。

              悪魔の研究が多くの妻と同じ患者を救うかもしれない(中略)俺はどのみち自分の人生しか生きられないのだ。



              ねずみ


              2冊目の連城三紀彦先生作品です。キッカケはやはり帯の綾辻行人先生のコメです(笑)
              短編集ですが、ひとつひとつ読み応えがあってお腹いっぱいになりました(*´ _`)<マンゾク

              目次は、
              二つの顔/過去からの声/化石の鍵/奇妙な依頼/夜よ鼠たちのために/二重生活/代役/ベイ・シティに死す/ひらかれた闇
              です。


              【二つの顔】
              理想の絵のために結婚した画家の妻が新宿のホテルで他殺体で発見された。だが、画家はつい先ほど自宅で妻を殺していた。

              似たもの兄弟だな、と思いました。女の愛し方が根本的に一緒で、目的が芸術と金という点が違えど捉え方が同じというか。
              是非とも警察には頑張ってほしいです。


              【過去からの声】
              一年前に刑事を辞めた男が、尊敬し愛し信じた先輩刑事に宛てた手紙。その中には、ある誘拐事件の真実があった。

              手紙の形式をとられているせいか、書き手である村川の心情が色濃くて、また、過去に自分を誘拐した犯人と宛先の岩さんへの慕情があからさまで、おかしな話ですが、ドキドキしました。ラブレター読んでる心地でした(謎)。
              薄氷を踏むような犯罪計画だったな、と思いました。過去も現在も、本物の両親より、誘拐犯の方が人としてのぬくもりに満ちている、という描写がなかなか切ない。


              【化石の鍵】
              車椅子の少女が、首を絞められた。そのとき彼女は、化石となった蝶が飛ぶ夢を見た。

              真相を知ってから最初から読み直すと、犯人がそのまま出てて驚きます。比喩じゃなかったのが何とも切ない。
              可哀想で健気な子でした。化石の蝶は彼女でした。


              【奇妙な依頼】
              多忙な興信所の調査員が受けた浮気調査の依頼。だが対象の妻は、尾行されてることに気づいていた。

              二転三転します。妻を信じるか依頼者を信じるか。
              しかしこの二人、無意味なものに大枚をはたく点が、似たもの夫婦だと思いました。
              どこか斜に構えた語り手の調査員。馬鹿馬鹿しい見栄のためについた嘘は、最終的に彼を莫迦にしました。


              【夜よ鼠たちのために】
              幼い頃、孤独だった少年が心を通わせた一匹の鼠。無惨な別れを経て、孤独に生きてた彼の前に現れた、愛せる存在との幸せーーそれを奪った医者たちへの復讐を、彼は誓う。

              『鼠』はダブルミーニングでした。驚きます。
              自分を孤独から救った鼠の『信子』を、名前は違えどあふれんばかりの笑顔と幸せを与えてくれる奥さんに重ねてるだけじゃなかった。
              殺された医者たちは屑ですが、命乞いの言葉は確かにその通りだと思いました。
              彼が逡巡するのもわかります。
              でもそのあとに続いた言葉もまた、その通りだと頷きました。何とも傲慢ですが。


              【二重生活】
              マンションの一室を与えられ、週に二、三度訪ねてくる十六歳も年上の男を待つ牧子。牧子を置き去りにし、自分ではない女の待つ屋敷に帰る男に憎しみを募らせ、浮気相手の若い男と共に、ある犯罪計画を遂行する。

              個人的に一番大きなどんでん返しを喰らいました。
              真実を知るまでは、牧子に同情心などカケラも無く、『花束を泥川に』『青春を奪われた』という言葉をおおげさと切り捨て、苦しいのは自業自得だとさえ思いましたが、彼女が本来の妻と知ってからは……。
              浮気相手の若い男が愛人を『奥さん』と呼んだときの気持ちを想像するといたたまれません。
              何となく『私という名の変奏曲』の美織レイ子を思い出しました。美しさにも若さにも恵まれているのに、醜い大人たちに弄ばれて壊された点が、共通してると。


              【代役】
              魅力的な微笑を持つ人気俳優、支倉竣は、彼そっくりの男を捜していた。それは自分の代役にするためだった。

              これはジャンルで言えばホラーだと思います。背筋が寒くなりました。
              支倉と関係を持った女の三人のうち、三人とも彼を代役として見てて、仕立て上げた
              とにかく恐ろしい。自分が創り上げたと思っていたもの全てが実は……なんて。
              (読者からすれば『こんな男のどこがいいんだ』の一言ですが)
              癖のこともあり、途中でものすごく混乱します。え、どっち? みたいな。


              【ベイ・シティに死す】
              出所した暴力団員の男は、二人の人間を捜していた。自分を陥れた愛人と弟分に復讐するために。

              【代役】と同じように、知らぬは本人ばかりという結末でしたが、こちらは悲劇でした。
              最後の霧の中に埋れていく情景は、主人公が無口な囚人となるのとリンクしているように思えました。


              【ひらかれた闇】
              私立教師、水木麻沙は退学した暴走族の元生徒たちに、グループのメンバーが殺されたと連絡を受けた。状況からして、犯人は元生徒の中の誰かだった。

              こちらの短編集は、1980年代に発表された作品で構成されています。どれも古く感じられませんでしたが、これだけは『なんか古っ(°ω°)』と思いました。
              主に不良たちのしゃべり方が。タケノコ族の時代っぽいとか思っちまったのサ。
              けど、犯人が殺人を犯した動機は、時代背景が大きく関わってるのかなと思いました。当時の警察の捜査方法や市民への接し方など。
              何ともしょっぱい事件でした。


              個人的お気に入りは、表題作と【過去からの声】です。
              たぶん次に読むのは、講談社文庫から11月に発売された、『連城三紀彦 レジェンド』だと思います。
              だって伝説ってついてるんだぜ。そりゃ読まなくちゃですよ。

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